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【第十回】 メタボリックシンドロームって?
院 長   吾妻 眞幸

最近よく耳にすると思いますが、今年の4月からこの病態の健診が始まりました。これまで、シンドロームXとか死の四奏、代謝異常症候群など様々な名称で呼ばれていたものを統一してカタカナでメタボリックシンドロームと命名されました。太ったらどうなるかというと、ちょっとややこしいのですが肥満、特に内蔵型肥満により溜まった腸間膜脂肪(いわゆる食材の網アブラ)などから分泌された遊離脂肪酸が肝臓で脂肪合成などに影響を与えて高脂血症、動脈硬化、高血糖などをもたらし、かつ脂肪細胞から生理活性物質(アデポサイトカインのうちアディポネクチンという物質)の分泌不全により直接動脈硬化性疾患の危険性を高める危険性が増すと考えられているからです。このことから肥満の改善が心臓血管障害の予防に役立つとの考えから注目されています。診断基準は臍の周りの腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上が必ずあり、かつ採血で中性脂肪が150mg/dl以上か善玉コレステロール(HDLコレステロール)が40mg/dl以下、130/85以上の高血圧症、空腹時血糖が110mg/dlの3項目のうち2項目以上があればメタボリッツクシンドロームと診断されます。血圧の基準もかなり厳しいものになっています。では、透析を受けている人の動脈硬化とメタボリックシンドロームの関係は?というと肥満者の割合は1%前後と少ない割りに8~26%と多くなっています。身体は痩せているのに内臓に脂肪が溜まっていることも考えられますが、糖尿病の人は相対的に太っており、糖尿病からの腎不全症の頻度が40%を超える様になっているためと考えられています。しかし、透析を行なううちに何らかの食事制限や逆に栄養不足をきたして肥満の頻度は低下します。脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンは透析患者では有意に高くなっており、分泌不全はおこっていません。つまり動脈硬化の進行因子ではないと考えられます。血圧に関しては一般の人では命を脅かす因子ですが、透析中の血圧変動など様々な状態であるため因果関係は不明ですが、日本透析医学会統計調査では高血圧患者ほど長生きしているとの報告もあります。コレステロールに関してはLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を下げたりHDLコレステロール(善玉コレステロール)を上昇させたりなどの脂質低下療法を行なっても冠動脈硬化は予防できないとの報告もあります。また、血糖コントロールに関しても肥満解消の助けにはならないし、血糖コントロールの指標のヘモグロビンA1cは貧血や増血剤のエリスロポエチンの影響を受けるため血糖値やヘモグロビンA1cの明確な基準がありません。肥満の透析患者が早死にすることはないと考えられており、逆に透析患者の場合は低栄養状態が動脈硬化性病変を引き起こすと考えられています。
透析を受けておられる腎不全症での動脈硬化病変はメタボリックシンドロームで問題となる肥満や脂質や血糖値や血圧といったものでは起こらないということです。
ただし、これから検討を重ねるうちに違った見解がでるかもしれません。

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