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理事長ごあいさつ

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震災から三ヵ月半が経ちました。その後も、これに関連した記事が連日伝えられています。今回の震災の特徴は、地震と二次的に発生した津波、更に三次的に発生した原発問題が複合的に被害を拡大したことでした。東北では、昔から地震後の津波の被害を何度か経験しているため、住民の津波に対する防災意識は、高いと言われていましたが、良く調べてみると津波に対する意識を強く持っていたのは岩手県のみで、仙台の人は全く意識していなかったそうです。仙台平野が津波の被害を受けたのは、約1100年前の貞観地震以来ですから当然かもしれません。21世紀に入ってからも、東北地方で震度6以上の地震が5回発生しており、大震災の起こる2日前にも震度5の地震が発生しています。地震の都度、津波警報や注意報が出ていましたが、このような大きな津波が襲うことなく過ぎていましたから、地元の人たちもある程度、油断があったのかも知れません。今回の震災の教訓の一つに情報の伝達を如何にコントロールするかという問題があったように思います。オオカミ少年ではありませんが、情報が何度も空振りに終わると防災意識が麻痺に陥ります。記憶に残る情報を発信する事がいかに難しい事か分かります。皆さんも透析導入のときに、カリウム制限の大切さを聞いたと思います。これは、恐らく皆さんの記憶に残った情報でしょう。タイムリーな情報発信と反対に、情報のコントロールを誤れば情報操作という問題が出てきます。情報操作とは与える情報(証言、記事、写真、映像)を制限したり、虚偽または虚偽にならない範囲で改変することによって、その情報を受け取った者が受ける印象や判断結果に影響を与えようとする行為と定義されています。
福島第一原発のメルトダウンやSPEEDIによる放射線の拡散情報を今になって公開するのは、まさに情報操作と言えるのではないでしょうか。政府は、国民にパニックを引き起こさないために情報を出さなかったと言っていますが、その評価はいかがでしょうか。諸外国は、この様な政府の姿勢に不信感を抱き自国民の日本からの避難を指示しています。
この事は、癌の告知に似ているように思います。今では、がん告知は一般的に行なわれていますが、以前は本人がパニックに陥るとの懸念から家族に告知し、告知された家族は嘘をついて看病しなければならないと言う悲しい時期がありました。現在の考え方では、本人に先ず知る権利があり、真実を伝える。その対応は本人が主に決定し周りが支えるという事でしょう。しかし、日々の生活において有りのままの事実をタイムリーに伝える事が、すべて良いことかどうか難しい問題です。降り注ぐ情報の中から自分に有益な情報を取り出す能力が問われます。
クリニックが皆さんの心に残る情報を如何に発信するか、改めて考えていきたいと思います。

理事長   依藤 良一

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