掲載内容


理事長ごあいさつ

今年も残り三ヶ月になりました。今年ほど大きな数々の災害に見舞われた年は、私の生涯において記憶にありません。また、国内の災害に目を奪われている中で、世界の経済や中東の政治情勢は大きな変化をしています。急激な円高や原発停止による電力供給不足で日本経済は、将来どうなるのだろうか?社会保障費や医療費はますます削られて、自己負担が増えないだろうかと不安が募るばかりです。震災復興の為、増税の話も顔を出してきました。いかに楽天的な私でも、チョッと待ってよ。大丈夫?という憂鬱な気分になってしまいます。
私は、心が沈んだ時に禅語を見る習慣があります。かねてより禅語に興味を持っていましたが、以前買い溜めした本の中から高田明和氏の本を最近読みました。氏は、清水の次郎長の子孫で慶応大学医学部を卒業され、浜松医科大学の名誉教授をされていました。医学と禅の結びつきに心引かれて購入した一冊です。
氏は、前書きの中で最近、仏教がブームである。その理由は、激しく変化する価値観、社会のうねりの中で、何か確固たる考え、人生観を持ちたいと思うようになった事、更にもう一つは、限界への挑戦であるといいます。格差社会の現代において、敗者のみならず勝者においても競争の結果は、すべての人に能力の限界を悟らせます。勝者であっても、加齢により体力・知力が低下し、限界を悟るのです。禅はこの様な問題を解決に導くと述べています。氏は、過去の禅の名僧が残した言葉をその本の中で解説していますが、そのうち私の心に響いた一節をご紹介します。
"明けても暮れても 今日という一日あるのみ"  北山寿安(江戸時代の医師)
要約すると、【一日暮らしと言う事を覚悟したら精神状態も健康状態も大変良くなった。今日一日暮らすほどの勤めをしっかりやればよい。どんなに大変でも一日だと思えば耐えられる。一生というのは、永いように思うけれど、昔のことをクヨクヨしたり、明日の心配や一年先、百年先のことを考えても仕方がない。誰も先のことは知らないのだから。明けても暮れても、今日という一日あるのみ】といっています。取り越し苦労をせず、目の前のことに大切に努力をすれば報われるということでしょうか。以前の巻頭言でご紹介した五木寛之の本によく出てくる"今日を生ききる"という考えと同じです。
この本を読んでもう一つ勉強しました。"布施"というのは、お坊さんにお経をあげてもらったギャラのようなものだと思っていましたが、本来は、苦しんでいる人や困っている人に何かを差し上げることだそうです。この布施が世俗的には運勢を良くするそうです。
釈尊は"無財の七施"といってお金や物でなくとも布施が出来て、良い運勢を招くと言っています。①涼しい目を施す(優しい目で相手を見ること)②優しい言葉を施す(ありがとう。お蔭様で)③和顔悦色施(和やかな顔で接する)④温かい心を施す ⑤身を施す(骨惜しみせずに仕事をする)⑥房舎施(泊まるところを与える)⑦床座施(席を譲りなさい)
⑥以外は、私たちにも簡単に出来ることですね。
人は、物の考え方次第で気が変わることは良くあります。良い方向に気を変えて楽に生きたいとつくづく考える今日この頃です。

理事長   依藤 良一

このページの先頭へ