理事長ごあいさつ
サッカーのワールドカップが開幕して盛り上がっていますが、それと同時にゴルフでは全米オープンが行われました。日本の松山英樹選手は残念ながら優勝争いは出来なかったのですが、注目は二位になったコンプトンというアメリカの選手です。彼は二度の心臓移植手術を受けていたそうで、試合後に喜びと共に感謝のコメントを残していました。
これには移植の素晴らしさを再認識させられ、とても感動しました。そこで今回は腎移植について話をしたいと思います。
みなさんの中で十分に移植の話を聞かれた方は少ないのではないでしょうか? 透析導入の時に主治医から三つの腎不全治療(血液透析・腹膜透析・腎移植)の話は聞かれたことと思いますが、それぞれの治療に長所と欠点があります。我が国においては差し当たって血液透析か腹膜透析が選択されます。その理由は、腎移植で提供される腎臓(ドナー腎)が生体腎か死体腎かによって移植に至るまでの期間が大きく異なり、適合性の検査など前もってたくさんの準備が必要となります。このため、とりあえず移植以外の治療が選択されるのです。
ここからは分かりやすくQ&Aの形式で話を進めたいと思います。
Q1:腎移植はどのくらい行われていますか?
2010年に移植を受けたのは1.484名で、そのうち1.276名は生体腎移植で、残りの208名(献腎146脳死腎62)が死体腎移植です。死体腎移植は、例年200名程度で推移しています。生体腎移植は、法改正と免疫抑制剤の進歩によって年々増加しています。
Q2:生体腎移植と死体腎移植とは?
生体腎の提供者(ドナー)は医学的・倫理的問題がなければ誰でもなれますが、日本のほとんどの施設では親族に限定しており、六親等以内の血族、または配偶者と三親等以内の姻族です。近年では配偶者間移植が急速に増えています(結婚期間の制約はあります)。
死体腎には、心停止後の献腎移植と脳死腎移植があります。献腎移植希望の透析患者は12、000人程登録されていますので、毎年二%弱しか受けられない現状です。
献腎移植は登録することが必要ですが、移植を受けるまでの平均待機日数は、20歳以上では約16年、16歳未満では優先的に受けられる制度になっているために約一年半となっています。
Q3:年齢制限はあるの?
年齢による移植適応の制限はありませんが、心肺機能などの面から70歳までが一応の基準となっています。また、平均余命で見ると、アメリカでは70歳の人が移植によって2.9倍伸びるのに反して、日本では透析技術が良好なため1.6倍延長するだけで、手術というリスクを考えるとメリットが少ないと考えられています。
Q4:感染症があるけど大丈夫?
移植の禁忌に慢性または活動性の感染症がありますが、事前に除菌(ウイルス)治療を行うことで絶対的な禁忌ではありませんが、再発のリスクは存在します。
Q5:費用は?
献腎移植登録料ですが、新規登録は三万円、更新は年一回五千円が必要です。また、二年間更新手続きをしないと登録が取り消されてしまいます。
移植手術料は、提供者も患者さんも健康保険の適応になります。実際にはコーディネート料十万円プラス数万円(臓器の輸送費用の実費)程度です。
兵庫県で腎臓移植を受けるには
- 指定施設での診察・検査(透析施設からの紹介状が必要)
- 移植の専門医による『腎臓移植適応』の判断
- HLA typingの血液検査(実費三万円、一部助成・免除あり)
- 日本臓器移植ネットワークへ登録申請
- 登録料の支払い(新規登録料三万円、一部免除あり)
- 献腎移植登録完了(完了通知ハガキ送付)
兵庫県の腎移植施設
- 神戸大学医学部付属病院
- 兵庫医科大学病院
- 兵庫県立西宮病院
兵庫県では、年二回腎移植推進懇話会が兵庫県透析医会の後援で開催されています。五月と十月に行っていますので、興味のある方は参加して下さい。
理事長 依藤良一