患者勉強会
『透析患者のフットケア』
関西労災病院 リソースナースセンター
渡辺 光子先生
仁成会 定期勉強会 特別講演
今年の勉強会は、関西労災病院 リソースナースセンター渡邊光子先生をお招きし『第2の心臓《足》を健康に保つために』~自分でできるフットケア~について、ご講演頂きました。講演内容を以下にご紹介いたします。
足病変とは
足は、爪や皮膚の水虫・巻き爪・タコ・ウオノメなど皮膚の病気や、関節リウマチ・足や関節の変形・外反母趾や扁平足等が原因で傷を作りやすいと言われています。そこに、動脈硬化が原因で起こる末梢動脈疾患(PAD)による血流障害があると、小さな傷が治りにくく悪化していきます。
糖尿病の合併症として、痛みや熱い等の感覚が鈍くなる神経障害が起こり、小さな傷を作り易く、傷に気付かず大きくなって初めて気付きます。糖尿病は、足への血の流れが悪くなる血流障害も併発しやすいため傷が治りにくく、「足かいよう」や「足えそ」の危険をさらに高めてしまいます。さらに悪化すると足の一部や膝や下腿から下を切断しなければならない事態を招いてしまいます。
なぜ透析患者さん足病変が多いのでしょう
- 動脈硬化が進行し血流障害を起こす
- カルシウム・リン値の異常や尿毒症物質の蓄積
- 血管の軽い炎症がずっと続く
- 糖尿病から透析になる人が多い
- 足の変形・靴ずれができやすい
- 視力障害・爪切りで傷つける、傷が見えない
これらの要因から、足病変をひき起こし重症化しやすくなります。
「透析患者の足病診療に関する実態調査」(全国腎臓病協議会)によると、調査対象である透析患者さん4102人の内、足病変について「検査、治療内容、治療してくれる診療科、治療後について詳しく知っている」と回答した人は18%と認識度が低い結果でした。足病変を発症するリスクが高く、「足の爪をこまめに切ったり、タコや角質のケアを行っている」人が47%「足に傷がないかこまめに確認している」人が34.5%「足を保護するため自分にあった履物を選んだり特注して履いている」人は23.6%と、足の健康管理に対して意識が十分でないこともあきらかになりました。まずは、自分の足への意識を高め、大切な足を守っていきましょう。
足を大切にするフットケア方法
健康的に生きるために「足」は重要です。
自分の足で歩くために、大切な「足」を守るフットケアについて紹介します。
1.足の観察
毎日の観察が大切です。お風呂に入るとき、靴下を脱いだ時に観察しましょう。
足の観察をする際に、特に キズ、変色、はれ、変形、ウオノメ、タコ、ひび割れなど がないかを チェックすることが大事です。踵の後ろや指の間といった見にくい所も鏡などを用いて忘れずに観察しましょう。
2.足の清潔
足の洗い方
- 40度くらいのお湯で洗いましょう。腕の内側の柔らかい部分でちょうど良いと感じる湯加減です。
- 足の裏や足指の間もきちん と洗いましょう。スポンジか、柔らかい素材のタオルでやさしく洗いましょう。
※ナイロンタオルは使用禁止 - 洗った後はよく水分を拭き取ります。足指の間もよく拭きましょう。
- 毎日、お風呂にはいれない時は足だけでも洗いましょう。
拭き取りだけの洗浄料
ベーテルF洗浄料
ルティアクアホイップ
使用方法
- 使用部位に応じて適量取ります
- 泡をお肌に置き、やさしく広げます
- 10~15秒前後に洗い流すか、ガーゼやタオル等でなるべく強くこすらずに優しく泡を拭き取ります
乾燥予防と保湿が大切な理由
足は、乾燥しやすい肌になっています。乾燥したままだと足の皮膚が肥厚したり胼胝(タコ)ができる原因にもなります。
糖尿病の人は神経障害のため汗がでにくく、更に乾燥しやすくなっています。
乾燥→ひび割れ→傷になりやすく、乾燥ひび割れの傷を治すのはとても難しいので傷をできにくくするため保湿が大切です。
- 保湿方法
- 足を洗った後は、すぐにクリームを塗りましょう。
- 寝る前、保湿クリームを塗ってから休みましょう。
- べたつきにくい保湿剤
セキューラML
ベーテル保湿ローション- 市販されている保湿剤や処方箋で出せる保湿剤もあります。足の皮膚の状態に応じた保湿剤の使用をお勧めしますので、医師・看護師にご相談下さい。
爪のケア
足の爪が1㎜伸びるのに約1ヶ月かかります。安全に爪のケアを行うには、爪やすりの使用をお勧めします。
靴下、靴を履くときに爪が引っかからないようにしましょう。
- 爪の切り方
- 湯で濡らしたガーゼもしくはアルコール綿で爪をふく
- 利き手と反対の方の手で足の指を固定
- 爪と皮膚の間を十分開き、ニッパーの刃先を差し込む
- 少しずつ摘むようにして切る
- ※爪やすりを週1回かけていたら爪切りはさほど必要ありません
- 爪ヤスリの使い方
- 爪の暑さ、長さ、ギザギザを削る
- 湯で濡らしたガーゼもしくはアルコール綿で爪を拭く
- 爪の橋から中央に向かってヤスリをかける
- 爪先の中央部分を上から下に向かってヤスリをかける
- 爪先を触って仕上がりを確認する
- 爪の粉をふき取る
- ※爪の表面と先端がツルツルになるように削りましょう
足・爪白癬(水虫)の観察と予防ケア
- 足水虫
- 足の指の間が赤くただれ亀裂が生じる
- 足の裏に水泡ができ強いかゆみを伴う
- 足全体の皮膚がかたく分厚くなり、細かく皮膚がむける
- 爪水虫
- 爪が白色や黄色に濁る
- 爪がポロポロと欠ける
- 爪が厚くなる
- 爪が変形するなどの症状が出てきます。
足の皮膚や爪に異常を感じたら、早めに皮膚科受診しましょう!
白癬(水虫)と診断された場合
- 足を洗った後は、指の間まで水分を拭き取りよく乾燥させる。
- 軟膏は、根気よく塗り続ける(最低6ヶ月)
- 足の裏に塗る時は、足全体に塗る。
- 爪水虫の外用薬で水薬タイプは、爪の周りに染み渡り皮膚に浸透するように塗りましょう。
靴下と靴の選択
- 靴下
- 通気性のよい綿かウールのものを選びましょう。
- 足を締めつけ過ぎず、ずれても下がらないサイズの合ったものを履きましょう
- 足にトラブルのある時は、出血に気付きやすく傷の状態が目に付きやすい白色のものを履きましょう。
- 毎日履き替えて、清潔を保ちましょう。
- 雨水でぬれた時は、早めに履き替えましょう。
- 靴
- 靴は自分の足の長さや幅など、足に合ったものを選びましょう。
- 靴の指導員(シューフィッター)のいる店で相談するもの良いでしょう。
- 靴が足に合っているか、負担がかかってないかを確認しましょう。
- 靴の購入は一日の中で最も足が大きくなる夕方を基準にサイズを選びましょう。
- 新しい靴は毎日十~十五分履き慣らし、一回に二時間以上履かないようにし、長時間履くのは一~二ヶ月後にするようにしましょう。
- ヒールなど一ヶ所に体重がかかるものは避けましょう。
- 靴底にクッションのあるウォーキングタイプがよいでしょう。
- 靴を履く前には、必ず靴の中をチェックし、小石などの異物が入っていないか確認しましょう。
靴の履き方
- 靴の中に小さな小石がはいっていないか確認して履きましょう
- 両手で靴をしっかり持ち、足をいれ、かかとがピッタリとくるように地面にトントントンとしましょう
- ルトなどがあれば、つま先を浮かせた状態で、しっかりと締めましょう。
- しっかりと履けたら、足の指が動くかどうか、窮屈ではないか、歩いてみてあたるところはないかなどを確認しましょう。
歩き方
足の健康のための体操
-
グーチョキパー
タオルつかみ