
2025年も半分が過ぎようとしています。2025年はアメリカ大統領にドナルド=ジョン=トランプ氏が就任し、日本をはじめ世界中で大きな影響を及ぼしそうで、我々の生活にも様々な影響がありそうです。埼玉県では道路陥没事故があり、トラックの救助に難航したこともあり、下水管の耐用年数の問題が報道され、日本全国においてインフラの再整備が求められ、時代の変化を感じます。また、4月13日から10月13日まで大阪・関西万博が開催されます。テレビをはじめメディアでも多く報道されていて、実際に行かれる御予定の患者様もおられるかと思います。個人的には「空飛ぶクルマ ステーション」に行ってみたいと思っていますが、予約抽選制の様ですので当選するのを楽しみにしています。
さて、突然ですが「透析でベッドに寝ている時間がもっと短くなればよいのに」と思われている患者様は多くおられるかと思います。また、「どうして透析は1回4時間以上必要なの?」「透析時間がもっと短いと楽に透析ができて、ほかのことにも時間を使えるのに」というお声を頂くこともあります。どうして透析時間は4時間以上必要なのでしょうか?今回はその理由について説明をしていこうと思います。
日本透析医学会の統計調査では、2008年末の血液透析患者の平均透析時間は3時間55分で、全国では概ね4時間の透析時間が一般的です。
2012年日本透析医学会の統計調査結果を用いた研究によると17万人あまりのデータを解析した結果、性別や年齢、栄養状態、体格等に関係なくどんな患者様でも透析時間が短いよりも長い方が、寿命が長いという結果が出ました。 また、米国の論文によると7か国22000人の血液透析患者のデータを解析したところ、透析時間4時間と比較して、透析時間3時間、3.5時間と透析時間が短い患者様はそれぞれ1.34倍、1.19倍と統計的に寿命が短いという結果が出ており(図1)、特に日本人でその傾向が強かったとの結果が出ています(図2)。

(図1)

(図2)
また別の米国の研究によると、世界12か国37000人余りの血液透析患者を解析した結果、30分の透析時間延長によって、統計的に有意に入院や心不全や溢水(透析間の水分摂取過剰)のリスクが低下(24%)しました。この研究においても、特に日本人でその傾向が強かったとの結果が出ています。また、透析時間の延長により血圧の安定化、貧血、リンの改善といった効果も報告されています。
このように透析患者様における複数の大規模研究の調査において、透析時間が長いと様々な健康面において身体の不調を軽減出来るという結果が報告されています(図3参照)。これはどうしてなのでしょうか?

(図3)
本来人間の体内において、腎臓は「一日24時間×週7日」休みなく働いています。その肩代わりをするのが透析という事を考えると、回数は多く、時間が長い方が腎臓の代用として良さそう、ということはイメージがわくと思います。例えば体内の水分コントロールに関して考えると、透析では数時間で急激に体内の水分量を変動させることになりますので身体への負担は大きくなります。これをもし時間や回数を増やすことができれば、一回当たりの変動する速度を小さくすることができ、体への負担も小さくなります。これは体内の不要な代謝産物や尿毒素、カリウムやリンに関しても同様で、透析時間が長くなれば、より多くの物質を除去でき、体内の細胞のより深いレベルまでの浄化が可能となります。そうなれば、食事や水分の制限を緩めることが出来る様になるため、透析患者様で問題になってくる、栄養状態の維持にも良い効果が期待できます。
透析の量が多い方が身体にはよさそうだ、という事はおわかり頂けたと思います。では透析の量を増やすにあたって、回数と時間、どちらを増やすのがより効率的なのでしょうか?医学的にはまだ明らかにはなっていませんが、個人的には穿刺回数が増えることによって、シャントや人工血管などのバスキュラーアクセスへの影響が心配されますし、通院に関する患者様の労力などを考えると、時間を延ばす方が良いのではないかと考えます。

そうは言っても、やはり「長時間の透析はストレスだな」と感じる患者様もおられると思います。そこで透析時間の過ごし方に関してお勧めの過ごし方について、少し御紹介致します。皆様それぞれのお時間を過ごされていますが、テレビ鑑賞やDVDでの映画鑑賞、読書、睡眠、スマートフォンでの動画鑑賞やゲームの他、スタッフや他の患者様との会話を楽しむなどもお勧めです。不安の解消や気晴らしにもなりますし、透析の知識も身につきますので、生活面において快適に過ごすヒントを得られる可能性もあります。透析の時間を御自身の中でリラックスする時間としてお過ごし頂ければ、理想的と思います。
1回3時間の透析時間を4時間に、4時間を5時間に増やすと、無理のない除水を行うことができ、水分や食事の制限も緩やかになります。心臓の負担も減り、カリウムやリンのコントロールが良くなることで骨折や血管の石灰化リスクも軽減されます。従前とは異なり、透析治療は学問の観点、機械の観点からも進歩を遂げており、50年以上透析をされておられる患者様もおられます。「永く元気に自宅で生活したい」「少しでも身体の負担を減らしたい」そんな方は、ぜひ一度透析時間の延長を検討してみることをオススメしたいと思います。患者様によって、御病状や生活スタイルに合わせた透析時間を御提案しますので、スタッフに気軽にお声がけ頂ければと考えております。
仁成会理事長 依藤 壮史