理事長ごあいさつ
私は、情熱大陸という番組が好きです。早寝遅起きの私にとって夜11時からの番組は辛いものがあります。しかも、月曜日はいつもより早く起きて、朝からフルスロットルで仕事をしなければなりません。先日、その番組で博物館展示ディレクターのドキュメントをやっていました。一昨年のバス旅行で行った薬師寺の日光・月光菩薩を展示する内容で、私が興味を引かれたのはその後姿でした。普段は見えない神々しい後姿を見て、その美しさに感動しました。そんな折、今読んでいる本の中にも一つのエピソードが書かれていました。ギリシャの彫刻家フェイディアスという紀元前四四〇年頃の人の話です。彼はアテネのパンテオンの屋根に建つ彫像群を完成させました。これは今でも西洋最高の彫刻だそうですが、彼の請求書に対しアテネの会計官は支払いを拒んだそうです。「彫像の背中は見えない。誰にも見えない部分まで彫って請求してくるとは何事か」。それに対して、彼は次のように答えたそうです。「そんなことはない。神々が見ている。」 〝天知る。地知る。子知る。我知る。″〝天網恢恢疎にして漏らさず″・・・・人が評価しない見えない部分にまで心を尽くすことは、最近の日本人が忘れかけているものの一つではないでしょうか。医療において、この概念は欠かすことのできない必須条件でしょう。 透析においては、大部分が包括医療となっていますが、この中に外来医学管理料というのがあります。これは透析患者さんの健康を維持・管理するために、検査や指導をするように定められた点数です。検査を月に何回やってもやらなくても同じ額が請求できる制度です。ですから、やらない方が儲かる仕組みになっているのです。また、入院施設基準と違って透析では、看護師の数によって点数に差はありません。少ない人件費でやる方が経営上は有利ですが、安心・安全な医療を行う上では問題です。その他、危機管理システムや透析液の清浄化もしかり。皆さんの見えないところでもコストをかけていくことが大切と考えています。小泉政権以来、経済原理の大きな波が医療や福祉を飲み込んでいますが、仁成クリニックは背中も綺麗なクリニックであるようこれからも努力してまいります。
理事長 依藤 良一