理事長ごあいさつ
今回は、”新しい“というテーマでお話をしたいと思います。”新しい何々“というと従来のものに比べて夢や希望がその中に含まれ「より良いもの」というイメージがあります。果たしてそうでしょうか。”新しいもの“が”新しいもの“でなくなった時に初めてその”新しいもの“が良いものかどうか評価されます。民主党の新政権が発足して9ヶ月たちましたが、その評価は決して良いものとは言えません。医療に関しても然りです。新しい治療法や治療薬がマスコミに報道されると、その病気で苦しんでいる患者さんは心ときめくものでしょう。しかし、ある日突然に副作用や合併症のない安全な夢のような治療法や治療薬が出現することは、皆無に近い確率と言えるでしょう。残念ながら、一歩づつしか進歩は見られません。透析の治療においても、オンラインHDFという治療法が話題になっています。県内のある地区の施設では、この治療法を最新医療と宣伝して患者さんの勧誘をしているという噂があります。HDFという治療法は、従来より行なわれており、実際に当院でも数例の方に実施しています。厚生労働省が認めた従来からのHDFはオフラインHDFと呼ばれオンラインHDFとは区別されています。どこが違うかといいますとHDF治療法とは、通常の透析と違い体重増加分にプラスして大量の徐水(5~10リットル)を余分に行ないます。この余分な徐水量に対して補液(5~10リットル)を行なう方法ですが、このことによって血圧の安定化や不均衡症状の低下、中~大分子量物質の除去量アップによる合併症の軽減が可能になります。オフラインでは補液に厚労省が認めた専用の補液を使いますが、オンラインでは透析液を利用します。本来透析液は体内に直接投与する許可を取っていないため、この方法は薬事法違反に問われる可能性があるのです。この方法のメリットは、HDF専用の透析器を必要としない事と補液量を自由に増やすことが可能です。
この治療法の適応となる患者さんを限定することなく広くHDFを行なうことが可能ですが、まだまだ安全とは言い難い治療法と考えます。勿論、この前提として透析液の清浄化を担保する必要があります。評価はもう少し時間がかかるものと思います。
『新しいものがすべて良いとは限らない。評価は新しくなくなった時に下される。』と古い嫁を持っている私が、最近感じることです。
今回は、堅い話になってしまいましたが次回は楽しい話を提供したいと思います。
理事長 依藤 良一