スタッフ一押し『愛する仏像』
今年度の企画として、毎号、スタッフ一押しの何かを紹介する事となりました。第一回目は、私、受付山口が、愛する仏像を紹介致します。
幼い頃に父から、仏様の手には、縵網(まんもう)という水掻きがついてるんやで、と教えてもらったのが、仏像に興味を持ったきっかけでした。カエルでもないのに水掻きって何なん?面白~い。泳ぐの?そう問う私に、父は嬉しそうに、「水掻きは泳ぐ為に付いてるんじゃなくて、下界の衆生を漏れなく救い上げる為に付いてるねん!」と話してくれました。それに仏様の手は人間のバランスと比較すると長いのですが、これも、常に衆生を救おうと手を差し伸べていらっしゃるうちに、長くなってしまわれたのだそうです。
ところで、仏像とは一体何なのでしょうか?簡単に説明するのは難しいようです。仏像というのは本来仏陀の像でなければならないはずで、狭い意味では、釈迦如来像だけを指しますが、時が経つにつれ、菩薩様や明王様や天部までが、仏像と言われるようになって来ました。階層を図にするとこんな感じです。
- 如来
- 既に悟りを開かれた、4つのグループの最高位に位置する仏様。(阿弥陀如来・大日如来等)
- 菩薩
- 悟りを得る為に修行中の仏様。如来様の仕事を手伝う名補佐役。(千手観音菩薩・弥勒菩薩等)
- 明王
- 荒々しい憤怒のお顔が特徴の密教特有の仏様。教えに背くものを、怒りの力で正しい道に導きます。(孔雀明王・愛染明王等)
- 天部
- 仏教が興る以前からインドで信仰されていた個性派揃いの神々たち。守護神として睨みを利かせ、仏や人々を守るガードマンです。(八部衆・吉祥天等)
それでは、各部門の、私の一押しの仏様を紹介致します。
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如来部門№1 薬師如来様!!(奈良県:新薬師寺)
東の果てにある、瑠璃という青い宝石が敷き詰められた美しい世界「浄瑠璃浄土」に住まわれています。左手には薬(やっ)壺(こ)という壺をお持ちです。薬壺の中には、心と体と社会の病を治すことの出来る万能の薬が入っています。
日光菩薩・月光菩薩を脇(きょう)侍(じ)とし、薬師三尊像として祀られている事も。
日光・月光菩薩は薬師如来様の診療の手助けをする看護師さんのような存在です。新薬師寺の如来様は、切れ長のくりっとしたお目がチャームポイント。こんなに人間味溢れる表情の仏様は、他にはいらっしゃらないです。 -
菩薩部門№1 文殊菩薩様!! (奈良県:安倍文殊院)
「三人寄れば文殊の知恵」の諺の由来となった知恵を司る仏様です。物事を全く主観を交えずに判断なさる、とても賢い仏様です。右手には剣、左手には蓮華(清らかさの象徴)・経典・五鈷(ごこ)杵(しょ)(煩悩を打ち砕く古代インドの武具)を持ち、獅子に騎乗する姿は、それはそれは凛々しく勇ましいです。知恵を司る仏様なのに何故剣を持っているのか?実は文殊様の持つ剣は戦いに使用する物ではなく、間違った理論や屁理屈・戯言をばっさり切ってしまう為の物なのです。釈迦如来様に仕える像もあれば、単独で信仰される像もあります。
奈良県:西大寺の像とどちらを№1にするか、かなり悩みました。(西大寺のものは、獅子の顔が愛嬌たっぷりで可愛いんですよ~)是非見比べてみて下さい。 -
明王部門№1 不動明王様!!(京都府:浄瑠璃寺)
大日如来様にお仕えする明王軍団の強きリーダーです。右手には悪を退治する為の剣を持ち、左手に持つ羂索(けんさく)という綱を用いて、煩悩だらけで、大人しく言う事を聞かない者どもを力づくで引き寄せ救い上げます。(強引でカッコイー)厳しさと慈悲の心を併せ持つ仏様で、古くから「お不動さん」と呼ばれ、親しまれているのも納得です。
又、全ての悪を見落とさず、救い上げようとするお気持ちの表れとして、右目は天を左目は地を見る「天地(てんち)眼(がん)」をお持ちです。お供に矜羯(こんが)羅(ら)童子と制多迦(せいたか)童子をお連れになり、衆生を救う時にはどちらかの童子を差し向けます。矜羯羅さんは温厚で、制多迦さんは誠実でたくましい、私はどちらも大好きです。 -
天部部門№1 四天王!!(奈良県:東大寺)
須弥山(しゅみせん)から下界を見守る仏教界の4人のガードマン。持国天様は東、広目天様は西、増長天様は南、リーダーの多聞天様は北に睨みを利かせています。多聞天様のみ単独で信仰されていて、その場合は、お名が「毘沙門天」様に変わります。四天王様は皆、獣皮の鎧を身に付けています。獣の後頭部から口先に腕を通し、残りの毛皮を体に纏っているので、肩先には獣の顔が来ることになります。それから、足は必ず天邪鬼を踏まえています。でもこれは天邪鬼を懲らしめているのではありません。あれは改心した天邪鬼が四天王様の足元に喜んで身を投げ出している可愛い姿なのです。京都の海住山寺にいらっしゃる四天王様も必見です。保存状態が素晴しいので、1体ずつ塗り分けられた赤・青・緑・白の彩色が見事です。
京都や奈良には、この他にも素晴しい仏像がたくさんあります。
皆様是非、私のお勧めの仏様たちに会いに行ってみて下さい。