掲載内容


理事長ごあいさつ

イラスト01

昨夜、私は50年ぶりに懐かしい光景を目にしました。 いつもの様に夕食後、愛犬と住吉川周辺を散歩していたところ、川岸から静かな歓声が聞こえました。季節柄、もしやと思い堤防から降りていくと、木の枝の隙間から懐かしい蛍の光が見えました。緑色の光がゆらりゆらりと点いたり消えたり、とても幻想的な懐かしい光で50年前の小学生だった頃の光景が蘇りました。暫くの間、興奮が冷めませんでした。みなさんが最後に蛍を見たのはいつ頃ですか? 高度成長と共に川の水は汚れ、蛍が住める環境が無くなりました。我々の生活の便利さと引き換えに消えていった世界です。 昨年の福島原発事故を契機に原子力発電の危険性が白日の下に曝され、すべての稼動が停止した今、その再稼動の是非について賛否両論渦巻いています。このまま再生エネルギーで賄えるまで原発を止めると我々の生活はどうなるのでしょうか。 まず、大前提は大規模な節電です。計画停電や突然の停電も避けられないでしょう。計画停電が実施されれば、透析医療では開始時間の変更や透析日の変更が必要になります。また、突然の停電では緊急回収をしなければいけません。人工呼吸器をつけている人は、まさに命がけの毎日になります。緊急手術も同様です。また、医療に限らず、安定した電力供給がなくなれば、立ち行かない業界が殆んどです。不自由を我慢するといった生易しいレベルではありません。火力発電に比重が移るとCO2問題が再燃するし、 原料となる石油や天然ガス購入の為に日本の国力はますます低下していくことでしょう。そして、将来日本から原発が消え、使用済み核燃料の問題も片付いたとして、我々は本当に安全を獲得できるでしょうか。答えは、ノーだと思います。 隣の国、中国は、稼働中と建設中を含めて40基以上、今後更に倍以上の建設計画をしています。新幹線事故で見せた世界を唖然とさせる対応を、原発事故で同じように見せたらどうなるでしょうか。穴を掘って土をかぶせるだけでは済まないでしょう。 人類は、原子力というパンドラの箱を開けてしまったのです。どういう方向に進むにせよ我々は覚悟をしておかなければならないと思います。

理事長   依藤 良一

イラスト02

このページの先頭へ