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便秘対策

♪今年は・・今年も?!・・快便になろう♪

明けましておめでとうございます。
今年も安定した一年が過ごせますように私たちもサポートしてまいります。
安定した透析生活の基本条件として、「睡眠」「食事」「運動」とともに「排泄」が挙げられます。どれも透析患者様にとっては、様々な障害因子がありコントロールが難しい項目ですが、今回は、透析患者様の50%以上の方が悩んでおられる「便秘」についてとりあげてみました。
厚生労働省の統計では、便秘人口は,男女ともに六十五歳以上の高齢者層に最も多いそうです。便秘は様々な原因で起こるわけですが、そもそも、生まれた時から便秘の人はいません。年齢を重ねるうちに生活環境や生活習慣の変化によって便秘の原因が増えてきます。
便秘には食生活が密接に関係しています。そこで食生活習慣に焦点を当てて、便秘対策をいくつかご紹介します。

「食べ終わりと食べ始める時間」

排便に関わる小腸の蠕動運動は、物を食べてから8時間後に活発になります。それによって内容物が大腸へと送り出され、便が形作られて排便されやすくなります。ところが、8時間以内に「ものを食べた」という信号を受け取ると、小腸は蠕動運動を中断し、消化のための時間を確保します。つまり、8時間より短い間隔で食事や間食を摂ると、そのたびに蠕動運動がストップし、その分腸内に内容物が停滞することになります。
日中は活動していることが多く、「8時間以上物を食べない時間」をとることは難しいので、睡眠時間を挟んだ夕食と朝食の間が最も確保しやすいと言えます。夕食をできるだけ早い時間に摂り、朝食までは、水分以外を口にしないように心がけることで、蠕動運動を助けることになります。そして、胃が空っぽの状態で朝目覚めて・・・

イラスト01
一日の食べ始めは朝食ですね。 個人差はありますが、食べたものは十二時間から二十四時間後に大腸の下行結腸まで送られます。これがS状結腸まで達すると固形の便となってたまっていきます。そして溜まった便は、「大蠕動」と呼ばれる強力な収縮運動によって、一気に直腸に送られて便意が起こるきっかけになります。この「大蠕動」は、朝食後一時間くらいが最も起こりやすく、朝食を摂り胃が膨らむことが刺激となって、結腸が収縮するという「胃・結腸反射」が起こり、便を直腸に送り出そうとします。
一般的にも良く言われる「朝食は抜かない方がよい」という事です。朝食を摂ることは、腸の大蠕動を促し、排便へとつながる重要な役割もあります。そして、起こった便意を無駄にせず、トイレに行く習慣をつける事が大切です。

「食物繊維と乳酸菌を摂る」

便を作り出す材料は、食物ですからまずは、食事をきちんと摂ることが基本です。
ダイエットをしている人や高齢の方は、全体の食事量が減ることによって便秘に傾くと言われています。特に高齢者は、活動量や咀嚼力の低下など食が細くなる原因が多くあります。食事量が減ると、使わない筋肉が衰えるのと同じように腸の蠕動運動も弱くなります。ある程度の食事量の低下は仕方がないことかもしれませんが、何とか工夫して、食事量を確保したいものです。
便の嵩を増やすには、食物繊維をとることがよく知られています。しかし、その摂り方には注意が必要です。一般に食物繊維というと生野菜のイメージが強いですが、殆どの食材に含まれています。
食物繊維には「水溶性」と「不溶性」の二種類があります。水溶性食物繊維(果物・大根・人参等)は、腸の中の水分に溶けてゼリー状になり便を柔らかくするはたらきがあります。不溶性食物繊維(レタス・キャベツ・きのこ類等)は、水に溶けにくく便のボリュームを増やして腸の蠕動運動を促す効果があります。この二つの食物繊維の役割を考えると一方に偏っていては効果がありません。効果的な摂り方は、不溶性2対水溶性1の割合でとることがよいと言われています。

イラスト02
食物繊維とともに意識してとっていただきたいのが乳酸菌です。
乳酸菌は、腸内細菌のバランスを整えるため便秘対策として重要です。
腸内細菌には、体に有益に働く「善玉菌」と有害な働きをする「悪玉菌」とこの二つの菌のどちらでもない「日和見菌」とよばれる三つ菌で構成されています
イラスト03
腸内細菌の中で最も多いのが「日和見菌」で、これは「善玉菌」や「悪玉菌」の多い方を助けるという働きをします。善玉菌は、消化吸収を促進し、腸管運動を活発にする働きがあります。また、悪玉菌もバランスの良い状態であれば、有害な菌を排除するなどの役割を担っています。従って、善玉菌を増やして日和見菌を味方に付けることで、悪玉菌を抑え、腸内細菌のバランスを整えることで便秘を予防する事ができます。しかし、年齢とともに善玉菌は減少すると言われ、腸内細菌のバランスが崩れる傾向にあります。その為、毎日の食事で乳酸菌を摂る事で、善玉菌を増やすように心がけましょう。
乳酸菌と言えば、ヨーグルトを思い浮かべる方が多いと思いますが、これは動物性乳酸菌と言われています。これに対し、植物性乳酸菌もあり、代表的なものは・味噌・しょうゆ・酢・みりんなど調味料や漬物・納豆・麹などに含まれています。食物性乳酸菌は、動物性よりも生命力が強く、生きたまま腸まで届くと言われています。味噌や漬物は塩分も多く透析患者様はちょっと摂りにくいかもしれませんが、全体の塩分を考慮して食事に取り入れても良いと思います。これらが腸内で善玉菌の栄養となり善玉菌が増え、悪玉菌を抑えて各々が腸内で本来の役割を果たすようになります。
透析患者様にとっては、塩分やカリウム・リンの制限もあり、こういった基本的な食生活が活用しにくいこともあるとは思いますが、要は、蛋白質や糖質・脂質とともに色々なものを偏らずに食べることが大切です。
最後に、毎日排便がなければ「便秘」というわけではありません。毎日出ればそれに越したことはありませんが、「一日おきでも、三日おきでも規則的にスムーズな排便があり、すっきり感があればよい」とも言われています。透析患者様にとって便秘は、体重増加やカリウム・リン上昇等の影響もあるので、単に「便が出ない」というだけでは済まされないところもあります。
今回ご紹介したことは便秘対策のほんの一部です。他にも下剤や運動のことなど色々方法はあります。まずは、食生活を一度振り返り、今回の食べ方や食べる内容を少し意識してみてください。そして、下剤での対応だけなく、良い排便習慣ができるとよいなあと思っています。もう少し具体的なことは、患者様個々に応じて考えていかなければいけないと思いますので、透析室で一緒に考えていきましょう。

【左記を参考・引用させて頂きました】
・水内恵子ほか・透析患者の排便トラブル110番・透析ケア2012VOL8NO8
・瓜田純久著・便秘を治す腸活テクニック・マキノ出版2015
・松生恒夫著・快腸!絶好腸!快便力・海竜社2013
・藤田紘一郎著・超すっきり菌活レシピ・成美堂出版2014

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