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患者勉強会

平成二十八年五月二十九日宝塚ホテル琥珀の間に於いて、恒例の勉強会を開催しました。
参加者は患者様、ご家族様、クリニック職員総勢一一七名でした。
勉強会は、物故者の黙祷に続き、通院十年、二十年表彰があり、患者様代表として第二仁成クリニックの川辺様が登壇され、記念品を贈呈されました。

次に依藤理事長のお話の概要をご紹介します。

透析医療における災害時の対応について

阪神大震災以降、透析の災害対策として、透析医会が中心となって「災害時連絡ネットワーク」が構築されました。これにより、災害時の情報を迅速に、できるだけ正確に把握できるように継続した訓練をしています。(巻頭言をご参照ください)正確な情報を共有し、どこに行けば透析ができるのかといった事が解るようになっています。
こういった情報の把握と同時に、災害時に各個人でまず何ができるかという事については、先ず四十八時間は透析ができない状況になることを念頭に置いて、それに耐えられるように心がけて頂きたい。阪神大震災の時は四十八時間後には何とか情報が把握できて、透析を受けられるような状況になりました。現在はもう少し早くなってはいますが、この透析ができない時期を乗り越えるためには、カリウムと水分制限をする必要があります。これは、常日頃からの管理が重要ですが、震災直後は特に注意をしていただきたい。(後述の震災に備えてをご参照下さい)

国民医療費について

国民医療費が四十兆円でその中で薬剤費が十兆円を占めています。そのため薬剤費を抑えるためにジェネリック薬を勧められています。また、内服処方は、必要に応じて最低限の内服薬を処方するように心がけていますが、のみ忘れや自己判断で中止されると、治療方針に支障をきたしますし、薬が無駄になってしまいます。もし現在の処方薬で支障があれば、必要に応じて変更も可能ですので、必ずスタッフに相談していただきたい。

透析患者様の高齢化について

透析患者様の中で後期高齢者が三割を占めています。高齢者と言っても、健康状態は様々です。そこで何が大事かというと、所謂、健康寿命をいかに維持していくかが重要です。日本は、平均寿命は世界一です。しかし、平均寿命に対して、介護の必要や寝たきりにならないで日常生活を送れる期間を示す健康寿命は、二〇一三年のデータでは男性で七十一・一五歳、女性では七十四・二一歳だそうです。平均寿命との差は男性が約七年、女性は約十二年です。この差が少しでも縮まるようにしたいものです。できるだけ介護を必要とせずに健康で生活する為には「しっかり体を動かす」「しっかり食べる」そして、「十分な透析をする」ことが大切です。こういったことが医療費を抑える事にもつながります。

特別講演

今回は、金 美齢 先生をお招きしました。
颯爽と、そして優雅に登壇された先生は、にこやかに挨拶をされ、講演が始まりました。
先生は、実は英語の教師をされていて、テレビデビューは、五十九歳の時だそうです。様々な番組に出演された中には、本音を言い過ぎて「お呼びが掛からなくなった」事もあったそうですが、デビューから現在に至るまで、メディアの中に存在し続けておられるのは、「きれい事だけではなく、本音を語っているから」で、勿論、人の意見には賛否両論がありますが、それでも、「イエスと言ってくださる人がいる事が私の宝物」であると話されていました。
「この世の中には、私たちの思考や論理を超えた何か(サムシンググレート)がある。それを信じることがまともに生きる事と信じている。『天は自ら助くる者を助く』という考え方があり、そのために、常に努力をすることが大切。」

さらに、「人間として人生において大切なことは、『常識を踏まえて、やるべきこと、やらなきゃいけないことをやること』が大切。例えば、日本には、国民皆保険という有り難い制度がある。この制度は五十年以上も継続されており、これは国民にとってとても幸せなこと。この制度が維持されていることの幸せとそれを支えてくれている人たちの貢献を忘れずに、自分が受けている幸せをできる範囲で、お返しする気持ちを持つこと、そしてそれぞれの立場で、できる範囲の貢献をする事で人は幸せになる」など・・・・・
先生は、六十年安保闘争の真っ只中に留学生として来日されたそうです。そして、現在に至るまでの様々な経験から、物事をどのように捉えて人生に活かすか・・・ということについて様々なエピソードと、少しピリ辛のユーモアを交えてご講演頂きました。
あっという間に時間が過ぎ、先生から多くのパワーを頂いたようで、若い(?先生より)私たちは、『ぼんやりしていられないなあ・・』と強く感じた一時間半でした。

最後に、第二仁成クリニック院長吾妻先生が、次のような挨拶をされ、今年度の患者勉強会は終了となりました。

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最後に、第二仁成クリニック院長吾妻先生が、次のような挨拶をされ、今年度の患者勉強会は終了となりました。
元気に年を重ねるためには、できるだけストレスをためないようにすることが大事だという事が金先生の講演を聞いていて納得しました。
ストレスといえば、国立循環器病研究センターの統計で、心臓疾患で救急搬送された患者様の生活背景を【夫婦二人暮らし】【独居】【子供と同居】で分類すると、最もリスクの高かったのは「子供との同居」で、低いのは「夫婦同居」だったそうです。
異なる世代との生活は、精神的なストレスが多くなるのかもしれません。こういったストレスをできるだけ少なくするためには、人に頼らず、「自分の事は自分でする」ことを心掛ける事が必要です。
ラマルクの「用不用説」をご存知でしょうか。『発達の限界を超えていない動物であれば、如何なるものでも頻繁かつ持続的に使用する器官は、次第に強壮に、より発達し、より大きくなる。恒常的な不使用は、僅かずつ弱々しくなり、良くなくなり、次第にその機能上の能力がなくなって、時には消失する場合もある』と言った説です。
人間は、産まれたときは寝返りも打てず、ある意味寝たきりですが、活発に活動して、立てるようになって、歩けるようになります。年齢を重ねるとその逆で、加齢に伴う衰えは仕方ないのですが、頭も体も、使わないと更に衰えて段々歩けなくなり、最後には寝たきりになってしまいます。
寝たきりにならない為には、足腰を鍛える。つまり歩くことが大切です。でも、足だけを鍛えたら、「徘徊」と言う名前に散歩も変わってしまいます。だから、色々なことに興味を持ち、考えたり、感動したりすることで頭も鍛えることも必要です。
透析をしていても、自分の事は自分で出来る様に、健康寿命を少しでも長く保ちたいものです。

イラスト02

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