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仁成会 定期勉強会

今年も5月14日の日曜日に、恒例の定期勉強会が行われました。

★特別講演
「大規模災害の経験と今後どう備えるか?」


医療法人社団 赤塚クリニック
赤塚 東司雄 先生

透析医療は、たくさんの水・電気を安定的に供給されることが必要なので、特別災害に弱い医療だと言えます。透析を受けなければならない自分ということを考えた場合、自分の準備が出来ていればそれで心配ないということにはなりません。
透析患者さんはまず災害が起きた時にどうしたら良いか?を知っておくことに加え、どこで透析が受けられるのか?についても十分な知識を持っていないといけません。そこで、今回みなさんと一緒に災害への備えを十分にするにはどうしたらよいかを考えます。

透析を受けるために

イラスト01

保険証・透析手帳(いろいろな連絡先を記載したもの)・お薬手帳・あれば災害時患者カードなど・3日分の内服薬(特にカリメート・ケイキサレート・アーガメイトゼリーなどの薬剤・インシュリンなど)をレスキューポットなどに入れておいて、冷蔵庫・玄関・下駄箱に保存しておきます。(ただし薬やインシュリンは定期的に新しくしないといけません)

生活をするために

お風呂のお湯を捨てないで貯めておく癖をつけてください。ついでに飲み水を入れたペットボトルを一本だけでいいので、冷蔵庫でもお風呂場でもいいのでストックしておいてください。(断水は一瞬で起こり、コンビニへ走っても水は一本も無くなっています。自分のお風呂場に常に水が張ってあるというのが一番確実です。地震につきものの火事が起きたときの初期対応にも繋がります)
薄手の毛布、下着(必ずビニール袋に入れて封をしておき、濡れても大丈夫なようにしておきます。それと予備のビニール袋はすごく役に立ちます)、筆記用具などをコンパクトに詰めたリュックを、やはりお風呂場か玄関に準備します。避難所へ行くまでに必要なものだけでよいと割り切ることです。
災害で最初に必要となるのは①情報②水 ③最小限の防寒の3つです。これだけのものをいざという時に、どこにあるのか分らなくて、地震でグシャグシャになっている家の中を探さないといけないというのは最悪です。

被災患者の栄養面

イラスト02

災害によって起きる被害も、みなさんが置かれる状況もバラバラなので、全てを語ることは出来ませんが、まずストレスに満ちた毎日を送らねばならないことだけは間違いがありません。避難所に行くようなことがあれば、とても透析患者に適した食事が毎日提供されるというようなことは考えにくくなります。
その時、カリウムもリンも塩分もすべて気を付けてということは実際不可能なので、優先順位を付けておくことも重要です。

透析患者であることを伝えること

阪神淡路大震災では、最長9日間透析を受けることが出来ない人が発生しました。また東日本大震災でも避難所で透析を受けられないまま一週間以上を過ごしてしまい、死亡された患者さんもいました。このような事件が起きてしまったのは、自分が透析患者であること、透析を定期的に受けに行かなければならないことを、避難所の支援者に一切言わなかったことが原因でした。
これまでのどの災害においても、皆さんが所属する施設、あるいは地域のネットワーク(日本透析医会の都道府県支部、地域の透析基幹病院を中心とする透析ネットワークなど)も早期から活動を始めてくれます。全ての人が支援透析を受けることが出来ているか?支援の網から漏れてしまった人はいないか?と動いてくれました。しかし、だから自分は何もしなくて良い、ということではありません。お互いの協力がなければ十分な支援が行き渡ることは難しくなるかもしれません。

高齢・要介護の患者が災害に遭った時にどう行動するべきか

震度7の阪神淡路大震災クラスの災害、東日本大震災クラスの津波災害の時、まず重要なのは避難所へ行くための手段の確保です。
高齢要介護という条件があれば、自分で動くことが困難な人と考えられます。何らかの支援を受けて避難所まで移動しなければならず、それが第一優先の行動となります。避難所へ移動したあとは、自分が透析患者であることを避難所のスタッフに伝えることです。伝われば対処がなされますが、伝えない限り何も始まりません。支援が受けられる場所まで行くこと、そして自分が透析患者であることを伝えることが最小限の必要なことになります。

高齢・要介護の患者の通院・移動手段の問題はどのようなことがあるか

さて、避難所へ移動してください、透析患者であることを伝えてくださいと申し上げましたが、自分でやるべきことはここまででよいのですが、災害時の混乱した時に、支援を要請するというのは、それほど簡単なことではありません。しかし、平時であっても自分で通院ができない状況下にある人の場合、災害時はさらに厳しい条件が加わることは避けられません。
支援を受ける必要がある人であること、それを知っているのは、自分自身と通院している透析施設、そして普段受けている介護サービスの事業者などということになります。これらの伝達手段のどれかを使って、まず自分の状況を伝え、支援を獲得することが求められます。

実際に透析施設間の支援体制や連絡体制はどのようになっているでしょうか?

  1. 被災地域を超えた範囲の、地域ネットワークによる支援透析が行われます。(2004年の新潟県中越地震、2005年の福岡県西方沖地震、2007年の能登半島地震など)いずれの地震においても被害は小規模で、支援透析も最短1日、最長で1週間程度おこなわれました。
  2. 日本透析医会の災害時情報ネットワークが稼動し、もう少し広い範囲での支援活動(支援透析の依頼、申し出、あるいはボランティアの募集応募など)が行われます。

どのような時に県外など遠隔地への移送になるのか、またその問題点と課題

Ⅰ.震度6弱~強の海溝型地震
被害が小さく限定的で短時間で復旧する災害は、ほぼ自助のみで対応が可能です。過去の例では、最大震度が6弱~強程度で津波の発生しない海溝型地震が当てはまります。
ライフラインは一時的な停電(長くとも1日程度)や断水(最長2日程度)は発生しますが、都市基盤となる設備そのものが破壊されるようなことがないため、短期の被害で終わります。
Ⅱ.震度6弱~強の直下型地震
それに対して、同じ程度の規模の地震(震度6弱~強)であっても、断層型・直下型の地震では、もう少し被害が大きくなります。建物の崩壊や都市基盤の破壊などが起きることが多くなり、被災期間も長期になりがちです。その場合は、避難所が設置されて多くの人が収容される事態が起きます。
Ⅲ.震度7の巨大災害、あるいは広域津波
こうすれば良いという方法はありません。地震を乗り切って生存していることがまず重要となりますが、その後の混乱は48時間程度続きます。支援を頼もうにも方法もなければ、あったとしても誰も来ることが出来ないという事態になるため、その間だけでも家庭での生活が必要となります。お風呂の水と家にある食料だけになるかもしれません。
イラスト03

最後に地震の震度と被害の状況を示します。
震度5であれば、何も起きません。安心して透析施設との連絡を取るようにしてください。透析施設も無事なはずです。
震度6弱と6強までであれば、透析施設が適切な対策をしてくれていれば、透析施設に被害は出ていないはずです。しかしライフラインはある程度被害を受けていて、復旧するまでに電気は24~48時間程度、水道は24~72時間程度かかることがあります。この場合短期間被災地を離れて、安全な地域へ支援透析を受けに行く必要が出てきます。自分の通う施設と連絡をなんとかとって対応してください。自分で連絡がとれない高齢者独居の世帯、高齢者のみの複数居住世帯は、介護関係、自治体の保健師などがきっと安否確認に来てくれますので、透析施設との連絡をお願いしてください。(これまでの地震では、いずれもこういう人々が早期に活動を開始してくれています)
また透析施設が無事でも、自宅が被害を受けて避難所へ行かなければならない場合、そしてそれが長期化する可能性が高い場合は、早く親戚を頼る、あるいは被災地外の病院への入院を検討する、経済的な余裕があればホテルへの滞在を早期に行うべきです。(仮設住宅に入居するまで数ヶ月かかってしまうことが多く、その間に命を落とす、災害関連死に見舞われる透析患者は多いです) 震度7・巨大津波に襲われたのであれば、長期に復旧は出来ないものと考え、早く被災地外への避難を行うべきです。いろいろな心配が多くあって離れたくないかもしれませんが、安全な透析生活のため、決断すべきです。

今回の講演資料を赤塚先生に頂いています。必要な方はスタッフまでお申し出下さい。

今回赤塚先生のご講演を聴き災害現場の状況などを伺い、改めて人間の無力さを感じました。しかし、事前の備えをすることで助かる命は大いにあることや、人と人との繋がりの大切さも感じました。
災害の備えには色々ありますが身近なこととして、以前にお配りした患者情報用紙を携帯電話やスマートフォンに取り込んでおくことやコピーを財布の中に入れておきいつでも使用できる状態にしておくことも一案です。

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