掲載内容


2021年も半分が過ぎようとしています。起稿している時点では、新型コロナウイルスワクチン接種が高齢者を対象に始まっており、当院でも宝塚市からワクチンが届き次第、接種を開始する予定です。
厚労省の指針では、接種の順番は「65歳以上の高齢者」の後に「基礎疾患を有する方」となっており、「65歳以下の透析患者様」のお手元には未だ政府からのワクチン接種券が届いていないと思われますが、届き次第なるべく早く接種を行えるように致しますので、その際はお声がけ頂ければ幸いです。
今回は「ワクチン接種後の生活」についてお話したいと思います。

以前も書いたように、ワクチンを接種すると体内にウイルスに対する抗体ができ、ウイルスが侵入した際の重症化を防ぎます。注意すべきなのは、重症化予防効果は2回接種で95%、残念ながら100%ではなく、5%はワクチンを接種していても重症化する可能性がある(実際は後述する集団免疫の要素なども加わるためもっと低くなると思われますが)ということは気をつけておく必要があります。また、現時点ではワクチン自体に感染予防効果は証明されていません。そのため、ワクチンを接種されてからも御自身が感染されない様に3密(密接、密閉、密集)を防ぎ、他人へうつさない様にマスクや手洗いを継続されることが必要となります。

アメリカでは、ワクチン接種後はマスクやソーシャルディスタンスが不要という指針が出ています。またイギリスではワクチン接種者を集めて、3密下で6万人規模のライブイベントを行うなどの社会活動が始まっています。これは経済活動の再開に加え、「集団免疫」がある程度得られた、との認識ではないかと思われます。「集団免疫」とは、ある病原体に対して、人口の一定割合以上の人が免疫を持つと、感染患者が出ても、他の人に感染しにくくなることで、感染症が流行しなくなり、間接的に免疫を持たない人も感染から守られるという考え方です。
図(*「こどもとおとなのワクチンサイト」から抜粋)を御覧下さい。黄色は抗体を持った元気な人、青色は抗体を持たない元気な人、赤色は感染している人です。抗体を持たない人の集団では感染がすぐに広まりますが、抗体を持っている集団の中では感染は青色の人まで届きにくいことがわかると思います。この効果で有名なのが麻疹(はしか)です。麻疹は非常に感染力の強い感染症であるにも関わらず、世界中で予防接種を行うようになり、現在ではほとんど見られなくなりました。
新型コロナウイルス感染症に関して、何%の人が抗体を獲得すれば集団免疫の状態になるのかについては、はっきりと分かっていませんが、60~70%という意見が多く見られています。しかし、実行再生産数(ウイルスの感染力)に依存するので、ウイルスが変異するたびに集団免疫に必要な抗体保有者の割合も変わってしまうため、正確な数字を出すのは難しいと思われます。ワクチンは変異型にも有効とされていますので、ワクチンをなるべく多くの人が接種することが重要です。

将来、皆がワクチンを接種して集団免疫が出来れば新規感染者数は低下すると思われますが、まだ時間がかかると思われます。それまでは自身が罹患し、他人にうつすリスクは変わりませんので、引き続き感染防御の生活は続けることが必要です。集団免疫というゴールは見えてきました。先の見えない戦いからは少し変わってきていますので、今しばらくの感染予防の継続を皆様お願い致します。

仁成会理事長 依藤 壮史

現在、37.0℃以上の発熱や感染が疑わしい場合は外来透析患者さんや一般の外来患者さんへの感染予防の目的で来院時間をずらし、別の部屋で透析治療を受けていただいています。
来院時間や注意事項は、電話で説明させていただくことになりますが、その際伝えられた来院時間は他の患者さんと接触しないよう設定された時間ですので必ずお守りください。

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