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2022年も早いもので、もう半分が過ぎてしまいました。2022年に入ってからは新型コロナウイルス感染症第6波があり、オミクロン株の流行により多くの感染者が出ました。
凹当院でも、以前より行政から通達されていた「透析患者が新型コロナウイルス感染症に罹患した場合は原則入院」という方針が、県内の透析対応可能な入院ベッドが満床となったため保てなくなり、保健所からの依頼でクリニックでの対応を余儀なくされました。
凹当院では、感染された患者様には時間的空間的隔離を行い、日本透析医学会からの勧告に即した感染対策を実施し、なんとか施設内での感染伝播を防ぐことが出来ました。
凹患者様・御家族様の御協力に心から感謝致しますと共に、今後も引き続き、三密の回避・来院前の検温・発熱時には来院前に当院への御連絡等の御協力を何卒御願い致します。

新型コロナウイルスの感染状況は少し落ち着きつつありますが、一方では新型コロナウイルス感染症によって外出機会・運動量が減少し、サルコペニア・フレイルが危惧されています。透析患者にとって、特に重要な病態である、サルコペニア・フレイルに関して今回はお伝えしたいと思います。
凹日本透析学会の統計調査によると、透析導入年齢は年々上昇傾向であり、2020年末の統計では平均年齢は69.4歳であり、新規透析患者の半分が高齢者とも言えます。
凹国内の高齢者人口も上昇傾向で、2022年の統計によると29.1%となり、健康寿命という、年齢を重ねても健康を保てるように工夫することが重要という概念が提唱されるようになり、それとともにサルコペニア・フレイルという概念がクローズアップされるようになりました。

(*サルコペニア診断基準)

もう少し詳しくお話ししていきます。
まずタンパク質摂取に関して、筋肉量を増やすために必要な成分であるアミノ酸(タンパク質の代謝産物)は、血液透析によって一回あたり4~8gが喪失されると言われています。実際透析患者はサルコペニア・フレイルのリスクが非透析患者に比べ高いとされており、サルコペニアは透析患者全体の12.7~33.7%、フレイイルは21.4%(フレイル予備軍は56.2%)という報告があります。そのため透析患者には十分なタンパク質摂取を推奨されており、日本透析学会ガイドラインによると0.9~1.2g/㎏標準体重/日の摂取と、十分なエネルギー摂取により、骨格筋量の減少を阻止できるとされています。

(*フレイル診断基準)

では、それ以上にタンパク質を摂取した場合はどうでしょうか?研究によると、タンパク質過剰摂取群と非摂取群を分けた際、腹部と大腿の筋肉面積に差は無い一方で、過剰摂取群では内臓や大腿部の脂肪面積は増加したとの報告があります。

また透析患者において、タンパク質摂取を行うと血清リン濃度の上昇を伴います。高リン血症は骨折の危険度や血管の石灰化に伴う心血管系疾患の発症リスクを上昇させ、生命予後を悪化させます。

凹さらに腎機能の低下により代謝性アシドーシスという、体内の細胞が酸性となりやすい傾向が元々ありますが、タンパク質摂取によりアシドーシスが進行し、高カリウム血症を合併しやすくなります。

凹以上のことから、透析患者は過度のタンパク質摂取は避けた方が良いと考えられます。
運動に関しては、適度な運動は好ましいとされていますが、先述したように透析患者は御高齢の方が多くなっており、平衡機能や血圧調節機能が低下しているため、転倒・骨折等の危険が出てきてしまいます。
また心血管系の合併症をお持ちの方は過度の運動により心臓への負担が増す可能性があります。そのため、適切な運動評価を受けた上で指導を受ける事が必要です。

析患者にとってのサルコペニア・フレイル予防において、「適切なタンパク質摂取と運動が重要」です。
皆様の持病や体格、リンをはじめとした電解質の状態によって、各患者様のタンパク質摂取必要量は異なるので、検査値や御病状を診ながら提案して参りたいと考えております。
皆様も「タンパク質が多すぎてもダメ、少なすぎてもダメ、ではどうしたらよいのか?」とお困りになる事も多いと思いますが、どうしても御病状や検査値で調整を要する場合があります。
大変ですが、少しでも健康を維持するため、一緒に頑張っていきましょう。

仁成会理事長 依藤 壮史

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