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教えて!Dr.ビーン!!

【第九回】 皮膚掻痒症
副院長  吾妻 眞幸

Dr.ビーン図1

今回は、合併症のうちの皮膚掻痒症についてお話します。まず基礎知識として皮膚の構造を理解してもらいます。皮膚の構造は*図にある様に表皮層、真皮層、皮下脂肪織層の三重構造をしています。紫外線や暑さ寒さなどあらゆる外界からの刺激に対抗し、古くなると角質(いわゆる垢)となって脱落し再生をくりかえしています。真皮層はコラーゲン繊維が豊富で血液が循環しています。こけたりしてすりむいたら血が出ますよね。それは傷が真皮層まで達しているということになります。その境目を乳頭部といいます。痛みの神経系は真皮層の血管周囲と皮膚表面に網目状に分布し、皮脂腺と汗腺が分布しています。針を刺した時、痛くない時は網目に当たっているためです。簡単に皮膚構造の話をしましたが、理解できました?

では、いよいよ透析皮膚掻痒症についてお話します。かゆみの種類には皮膚に湿疹や発赤などを伴ったものとそうでないものの2種類があります。かゆくなるとかきむしる事で傷がついたり出血や感染をきたすと更にひどくなります。では、かゆみの原因は?治療法は?となると現在のところ解明されていませんが、仮説としては

  1. かゆみ物質(尿毒性物質、鉄など)の蓄積。
  2. 皮膚の乾燥。(透析患者は水分バランスが一定にならない事と皮脂腺の萎縮などにより皮膚が乾燥しており、外的刺激、例えば毛布や衣類などの刺激で表皮基幹細胞から神経成長因子が放出されて、知覚神経が成長して表皮上層までのびて、少しの刺激でもかゆくなる。)
  3. 化学伝達物質の関与。(皮膚が刺激されることによりかゆみ惹起因子が産出されて脳に働いてかゆみを誘発する。)
  4. 中枢性(脳)のかゆみ。(脳内にかゆみを感じる部位がありある種の物質が関与していて、その物質が透析患者では高値になっている。)

など4つが考えられています。治療としては原因1.に対しては十分な透析をする事。2.に対しては、皮膚を乾燥させない様に保湿剤を使用する。(入浴後30分以内に塗らないと効果がありません。)韓国式垢すりや美容皮膚科でやっているピーリングというのは、皮膚をむりやり剥がしている事になります。垢はきたないけど皮膚を剥がしてしまうと色々な不都合が生じるので、お風呂に入っても健康タオルでゴシゴシこすらず、石鹸を泡立てて角質を落とす様に優しく洗う。3.に対しては抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、ステロイドホルモン剤などの内服や塗り薬を使用する。4.に対しては内服薬が臨床試験されており、かなりの効果が期待できます。

もう少しで発売される予定です。
以上、かゆみは透析患者にとっては非常につらい症状のひとつではありますが、現時点では皮膚を清潔にし、保湿につとめる以外、有効な手段がないのが現状です。

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