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2023年も間もなく半分が過ぎようとしています。春には野球のWBCで日本が優勝し、新型コロナウイルス感染者数減少とそれに伴い旅行の規制緩和やお花見の再開など明るいニュースがありました。
新型コロナウイルス感染症は2023年5月8日から感染症法における位置づけが2類から5類へ変更となり、皆様が仁成航路を御覧になられている時には、様々な点が変わっていると思います。
今回は2類から5類に変更となることで、どのような事が変わるのか、透析の視点からお話したいと思います。

感染症法とはどのようなものなのでしょうか?
感染症を取り巻く状況の変化に対応するためそれまで存在していた「伝染病予防法」に替わり、 1999年4月1日から「感染症法」が施行されました。目的は人権に配慮しつつ感染症の予防対策を取ることで、分類としては1~5類、新感染症、新型インフルエンザ等感染症に分けられ、できる措置も法定されています。これらに分類出来ない新規感染症は指定感染症というカテゴリーに含まれ、法律ではなく政令での対処となります。

図1でお示ししますように2類から5類になると対策が異なります。大きな違いとして、一般の医療機関で診療を行うようになります。
今後当院では、発熱患者様の診療の際は、極力皆様の利用場所とは異なる場所や時間で行います。発熱患者様と皆様の接点がないようになるべく注意致しますが、皆様もマスク着用やワクチンの接種など可能な範囲での自衛をお心がけ頂ければ幸いです。
なお図1の注意点として、病院や高齢者施設では引き続きマスクの着用や感染対策を行うように厚生労働省や各学会から勧告されています。

2類から5類となっても新型コロナウイルス自体が変わるわけではありません。現在の流行株であるオミクロン株は従来株と比べて毒性が落ちますが、現在も油断できないウイルスです。危険性についてご紹介します。
図2にお示ししますように、初期の新型コロナウイルスに比べ、現在のオミクロン株は弱毒化しています。一方で日本透析学会の統計調査によると、透析患者における死亡率は5.9%であり、国内全体の死亡率0.2%と比べ遙かに高くなっています。
透析患者の死亡の内訳はワクチン未接種で19.9%、1回接種は9.5%、2回接種は5.4%、3回接種は1.7%とワクチンを接種するとともに死亡率は低下しています。では、これらの死亡率というのはどのくらい危険な数値なのでしょう?
同じく透析患者にとって危険とされるインフルエンザと比較すると、透析患者は0.02%、健常者での死亡率は0.006%とされ、新型コロナウイルス感染症の方が桁違いに死亡リスクが高くなっています。これは日本だけでなく、アメリカの論文によると新型コロナウイルス感染症はインフルエンザと比較し1.61倍の死亡リスクという結果があります。
この研究ではワクチン接種者の感染も含まれており、ワクチン接種の回数とともに死亡リスクは減少しています。

このように透析患者にとって新型コロナウイルス感染症は依然として毒性が強く、注意が必要と言えます。2類から5類になったからといって、ウイルス自体が変わるわけではないのですが、5類感染症になったことで世間の新型コロナウイルス感染症への関心が薄れ、ワクチンの接種率が下がり、感染対策への協力も求めにくくなると予想され、しばらく大変な状況が続くかもしれません。
また、この数年間でこのウイルスは大きな変異を繰り返してきました。これまではワクチン接種や感染した方は次の感染では重症化しにくくなっていますが、このような知見をひっくり返すような変異を起こす可能性もゼロではありません。緩和を進めていく場合はこのような最悪のシナリオも想定した上で少しずつ進めていく、謙虚な姿勢が必要と考えられます。
政府は今後の感染対策は個人の判断に委ねると発表しています。御自身の重症化リスクを評価し適宜ワクチンを接種すること、また流行状態を適切に把握し、流行時にはマスクを着用し外出を控えることも必要となるかもしれません。判断に迷われる場合は私共にご遠慮なく御相談頂ければ幸いです。

新型コロナウイルス感染症が5類となってからも皆様が少しでも健康に暮らしていけるように努力して参りたいと思っています。これからも感染対策を引き続きよろしく御願い致します。

また2023年3月より川西での送迎車サービスの運用を開始致しました。開始間もない事で、ご利用の患者様・御家族様には色々と御不便をおかけすることもあるかと存じます。これからもサービスの向上に努めて参りたいと思っておりますので、何かお気づきになられた際にはご遠慮なくお伝え頂ければ幸いです。
皆様に少しでもストレスなく通院頂ける様努めて参りますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

仁成会理事長 依藤 壮史

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