副院長 吾妻 眞幸
腎不全症の治療は血液透析、腹膜透析、腎移植があります。日本では腎移植件数は少なく、前2者が治療の主体になっています。血液透析は約六十年、腹膜透析は約二十七年の歴史があります。透析治療法の進歩に伴い、体外循環も安全に行える治療方法となってきましたが、腎不全病態や合併症は昔と何ら変わりがありません。逆に新たな合併症として透析アミロイドーシスなどが問題となってきました。その結果、血液透析濾過などの新たな治療方法の必要性も生じています。
また、透析液に含まれる毒素(エンドトキシン)除去のため透析液清浄化の問題もあります。これらの問題に対応する為、当院では透析濾過対応監視装置の設置、エンドトキシン除去フィルター設置、各監視装置にクリーンカプラを設置しています。しかし、機械が立派でもそれを扱う医療者の技量不足や機械が故障していては何もなりません。そのため、定期的な勉強会や学会参加、院内委員会などを開催し技量向上を行うとともに、今まで行えなかった技士による機械整備などを行えるようになりました。
病院の透析室もクリニックも同様に高度医療を行わなくてはなりません。その一環としてCAPDの導入といった治療方法の拡大やシャント手術、手根管手術を行っています。また、本年度から兵庫医大の非常勤講師として定期的に、後輩の指導に当たる事になり、兵庫医大や宝塚市立病院、甲南病院などと更に密な病診連携をとる事により合併症治療がスムーズに行えるようになりました。加えて、これからの治療の安心とともにクリニックにはアットホームな雰囲気が必要です。私が来てからもかなりの職員の入れ替わりがあり、雰囲気が変わってしまったと嘆いている方もいるとは思いますが、どこの透析医療機関も抱えている問題として看護職員の定着率の低下があります。しかし、中途退社は結婚や転居といった事情に限られており、辞める事で患者や残った職員に多大な迷惑がかかることを考えると医療者として疑問が残る行動ではないかと思います。今後は、職員の定着率の向上と更に医療の向上をめざして、安心できるクリニック作りを行っていきたいと考えています。