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教えて!Drビーン!!
【第四回】アミロイド症
副院長 吾妻 眞幸
この前、お返しした特殊検査についてお話しします。先ずは、β2-MG(ベータ・ツー・マイクログロブリンと読みます)から。この物質は透析アミロイド症の前駆蛋白、つまり材料と考えられています。通常β2-MGは身体のなかで有核細胞とくにリンパ系細胞で作られ、免疫に関係した働きをした後、おしっことして排泄されます。腎臓機能が低下してくると排泄されないため体内に蓄積をしてきます。そのため、腎機能の評価(どれくらい腎臓がいたんでるか)にも利用されています。また癌や白血病、エイズ、膠原病などでは産生が盛んになり血中濃度が上昇してきます。アミロイドってどういう意味?って、思いませんか?アミロイドの意味は、デンプン様の物質という意味で、発見されてから150年余り経っています。からだの中で材料(無害)から何らかの原因でデンプン様の物質(アミロイド)が作られて蓄積してきますが、これだけでは無症状です。蓄積量が多くなり症状が出た状態をアミロイドーシス(〜症:有害)といいます。この材料となる前駆蛋白は、現在まで20種以上発見されています。

次に透析アミロイドーシスについてお話しします。材料となるβ2-MGが身体の中に貯まってきて、どうやってアミロイドに変わるか?って、思いませんか?答えは残念ながら全く解っていません。最近の仮説では、身体に貯まってきた血液中のβ2―MGが何らかの原因で変性したβ2-MGとなり、変性した時点で炎症反応をきたして色々な作用を受けて(リンパ球やサイトカインなど色々な物質が関与している報告があります)アミロイド蛋白に変化し、沈着量が多くなると症状(アミロイドーシス)がでると考えられています。結局、材料とその変性物質が解っているだけで、形成機序については詳しくは解っていないという事です。

では、透析を始めてどれくらいでなるの?どこに貯まって、どんな症状が出てくるの?治療は?予防方法は?って、疑問がでると思います。
お答えします。アミロイドの沈着は、腎不全症になった時点ですでに始まり、透析開始7年以上たってから症状が出現し始め、統計では透析開始10年で40%、20年で90%に認められると考えられています。沈着部位は心臓や肺など全身臓器ですが、症状が出る程の沈着を認める部位は腱鞘、関節包、靱帯、骨などが特徴的です。しかし、なぜこの部位に多いのかも解っていません。症状としては手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)多発性関節症(たはつせいかんせつしょう)バネ指べーカー嚢腫(のうしゅ)脊椎管狭窄症(せきついかんきょうさくしょう)破壊性脊椎関節症(はかいせいせきついかんせつしょう)などがあり、治療は沈着した部位に対して行う外科手術という事になります。言い換えれば、いったんアミロイド沈着したら、元のβ2-MGにもどす方法がないという事になります。

例えれば、小麦粉に水と塩を混ぜてうどんを作りますが、作りすぎたからといって小麦粉に戻す方法がないのと一緒です。(それぞれの疾患の詳細は次回にお話しします。)治療法がない限り予防が重要となってきますが、原因がはっきり解っていないので確実な予防方法はありません。ただし、進展要因を取り除くという意味合いで@生体適合性の高い透析膜を使用する。A透析液をクリーンに保つ。Bβ2―MGの除去を行う。などが考えられています。

@としては合成高分子膜の使用ですが、当院はすべての透析膜がこれになっています。Aとしては、透析液の細菌や毒素を取り除くエンドトキシンフィルターの設置(当院では設置しています)Bとしてはβ2-MG吸着器リクセル、血液濾過透析(HDF)などがあります。しかし、血液中のβ2-MGを除去してもしなくてもアミロイドーシスの発症とは関係がない事が解っています。つまり、血液検査の値が低いからといってアミロイドーシスにならないとは限らないということです。但し、高値は危険性があると考えられています。

つまりタバコを吸う人だけが肺癌になるのではないけど、危険性が上昇するということと同じです。骨病変などがある場合にはリクセルという吸着器で直接β2―MGを除去するため使用しますが、骨痛などの自覚症状の緩和は他の原因物質も吸着しているためではないかと考えられています。

最近、注目されているHDFは分子量の大きいβ2-MGを除去するには優れた方法です。しかし、どれくらいまで除去したらいいのか(基準値が不明)また、どれくらいの期間続けたらいいのかも解っていません。逆に治療を止めた途端に治療前よりも値が悪くなるという報告もあります。

また、現実にはHDF治療自体の適応疾患が定められており、すべての患者に使用できないのも事実です。最近、腎友会雑誌の「きぼう」の広告にオンラインHDF対応とうたっている透析施設が散見されますが、これは透析液を綺麗に浄化して点滴液(置換液)の代わりに使用する方法(点滴を買うより安上がり、適応範囲が広がる利点がある)ですが、置換液の作成方法は通常の透析液を単純にフィルターを通しているだけで、本当に身体に有害な物質が除去できて綺麗になっているかどうかの検査は毎日行えず、どんな副作用が発現するかも現時点では解っていません。

また、治療方法として国に認可承認されてなく、学会レベルの実験として患者の承諾を得てデーターを発表している段階で、通常使用を平気で行っているのはどういう訳でしょう?また、透析液は透析液として認められているのであって、点滴として代用するのは完全な薬事法違反になるのですけどね〜。

次にアルミニウムですが、これは昔の透析は水処理を行わず水道水で透析を行っていたことと、リン吸着のためアルミ製剤を服用していたため体内に蓄積してアルミ骨症やアルミ脳症(アルツハイマー病と同じ)をきたす症例が認められる様になり年1回測定する事になっています。(学会発行マニュアル)しかし、現在は水処理も行っておりアルミ製剤の使用も行っていないことと血液レベルと組織レベルは関係がない事が解っており、あまり問題にはなりません。ただし、市販の胃薬の中には入ってますので長期間服用すると蓄積するおそれがあります。次回はPTH(副甲状腺ホルモン)と手根管症候群など各論のお話しをします。

以上、「前の仁成航路はさぼったんとちゃうか?」とご批判いただいた堂○さん、ご理解できましたでしょうか?