理事長ごあいさつ
先日、兵庫県腎友会の広報誌“きぼう”100号記念特集を読ませていただきました。そこに私の恩師である藤田嘉一先生が、特別寄稿を載せられており興味深く拝読しました。今回の寄稿とともに、昭和53年に同誌に寄せられた文章も掲載されており、30年前の先生の透析医療の現状と将来の問題点
を見事に分析され感服しました。(昭和53年というと私が医者になって2年目のぺーぺーでした。)昭和53年寄稿文の一部を紹介します。
『透析医療の進歩に伴い生存率は向上してきましたが、合併症対策が今後の急務であり、また適応拡大による小児・老人の透析例が増加しつつあります。・・・(中略)大人の構成メンバーを大別すると、健康人、老人、病人に分けられると思います。これからの時代は、更に人工臓器依存症の人(外見的健康さと病気の両者をもった人)が加わってきます。』 “人工臓器依存症の人”とは、我々が第二仁成クリニックを開設するに当たって、透析患者と透析者を分けて考え、透析者に特化した施設を目指したものと一致します。先生の文章を続けますと、『従って、この人工臓器依存症の人々は一般社会から取り残されないように、また特殊な目で見られないように、自分たち自身で受けた恩恵を社会に還元するという意気込み、積極的な生き甲斐を持った生活を送らねばなりません。』30年後の現在において、患者さんの意識変化は大きいと思いますが、社会に参画して貢献する意気込みは、褪せることなく持ち続けていただきたいと思います。
“きぼう”100号記念特集では、次のように述べられています。『近年の医学の進歩により、透析患者の合併症に対する治療戦略は、ほぼ確立されつつあり、延命がもたらされているにも拘らず、多くの問題点がある。・・(中略)その一番問題なのは、通院できない長期透析患者です』 急速に進行する高齢化社会と長期透析患者の増加は、先の大人の構成メンバーの比率を、30年の間に大きく変えました。小泉改革の一つである医療制度改革により、入院が容易に出来ない状況となっています。入院医療から在宅医療へのシフトが、人工臓器依存症の人や老人をどんどん病人に変化させているように感じます。しかし、長期透析合併症のいくつかは、皆さんの日々の努力の積み重ねで予防が可能です。先日の勉強会でも言いましたが、体重管理・リンのコントロール・運動が大切です。クリニックスタッフもお手伝いしますのでともに頑張りましょう。最後に先生の文中の言葉を引用してまとめます。『幸福感、生き甲斐を抱かせるために人とのコミュニケーションを大切にし、人間らしくあるように医療・看護・介護をともに行うリハビリテーション活動が望まれます』 更なる10年後には再生医療の応用範囲も増え、苦痛のない透析生活が送れると信じて。
理事長 依藤 良一