掲載内容


新年明けましておめでとうございます。
二〇二四年は日本の新紙幣(三券種)が二〇年ぶりに発行される予定です。その前の更新は、やはり二〇年前の一九八四年との事で、その頃の千円札は夏目漱石、五千円札は新渡戸稲造、一万円札は福沢諭吉がデザインされており、懐かしく感じます。新紙幣発行は一つの歴史の区切りを感じます。

さて、今回は透析患者様にとって主要な合併症の一つである、閉塞性動脈硬化症についてお話したいと思います。
動脈硬化による狭窄〔細くなる〕や閉塞〔詰まる〕は、全身の動脈に起こります。脳の動脈が狭窄・閉塞すると一過性脳虚血発作や脳梗塞を起こし、心臓の冠動脈が狭窄・閉塞すると狭心症や心筋梗塞を起こします。手や足の動脈が狭窄・閉塞して栄養や酸素を十分に送り届ける事ができなくなると、手足の先が冷たくなったり、筋肉の痛みが出たりします。このような全身の状態を、閉塞性動脈硬化症といいます。今回は下肢の閉塞性動脈硬化症に焦点を当てていきます。

■ 原因

閉塞性動脈硬化症の原因である動脈硬化は、コレステロールなどの成分が動脈の内部に付着したり、高血圧や喫煙などで血管に負担がかかってしまうことで引き起こされます。

■ 有病率

わが国において腎不全患者が閉塞性動脈硬化症を合併する頻度は,維持透析期で三七.二%と非常に高くなっています。また約七〇%は無症状と言われており,症状が乏しいまま急速に重症化する場合があり注意が必要です。日本において、皮膚潰瘍に至り専門的治療を要する患者の五〇%以上が透析患者と言われています。
なぜ腎不全患者は閉塞性動脈硬化症を合併する頻度が多いのでしょう?原因として尿毒症物質,カルシウム・リン代謝異常が原因として指摘されています。

■ 症状

閉塞性動脈硬化症の症状は4つの段階に分けられ、狭窄や閉塞が悪化すると症状が段階的に進行します。

Ⅰ度:冷感・痺れ
Ⅱ度:間欠性跛行(かんけつせいはこう)
しばらく歩くとふくらはぎなどが締めつけられるように痛くなり、歩けなくなりますが、休憩すると痛みが無くなり、歩けるようになります。狭窄や閉塞が悪化すると、次第に歩ける距離が短くなります。「以前は駅まで休まずに歩けたのに、最近は3回休まないと駅にたどり着かない」などが危険信号です。
Ⅲ度:安静時痛
歩かず安静にしていても痛みが続きます。
Ⅳ度:潰瘍・壊死
皮膚や筋肉の血流が不足して、小さな傷や低温やけどなどをきっかけに、皮膚に潰瘍や壊死を起こします。細菌感染を伴って抗生剤治療でも血流が悪いため、治りが悪くなります。

症状がⅡ度以上になった場合は循環器内科を受診し、精密検査を受け、治療が検討されます。

■ 生活での注意

足が冷えると血管が収縮し、血液の流れがさらに悪くなります。靴下や毛布を使って保温に努めましょう。爪を切る際は、深爪をして傷が出来ないようにしましょう。四季を通じて素足を避け、靴下を着用して足を保護し、靴も足先のきつくないものを選ぶ様にしましょう。
足はいつも清潔にして、水虫等の皮膚病にかからない様に心掛けましょう小さな傷や低温火傷が中々治らず、感染を起こす事や、潰瘍に悪化することがあります。電気あんかや湯たんぽ使用時は、低温火傷に注意して、手足に直接あたらないようにしましょう。特に糖尿病の方は、四肢の感覚障害を伴っていて、やけどに気づくのが遅れる場合があるので要注意です。

■ 検査

  1. ABI〔足関節上腕血圧比〕
    両手と両足の血圧を測って、ABI(Ankle-brachial Index:足関節上腕血圧比)を計算します。足の血圧は、腕の血圧と比べると同じか、少し高いのが正常です。当院ではこの検査を定期的に施行しています。
  2. 超音波検査
    足や腕の動脈を超音波で見ることで、狭窄や閉塞を調べることができます。
  3. CT検査血管の動脈硬化の程度、特に石灰化と呼ばれる、石のように硬くなった部分が分かります。
  4. 造影検査
    狭窄や閉塞している場所の近くにカテーテルを入れて、造影剤を注入することで、動脈の狭窄や閉塞の場所や程度が詳しく分かります。カテーテルによる血管内治療につながる検査です。

■ 治療

細くなった血管の治療には、内服薬、リハビリテーション、カテーテル治療、手術など様々な種類があり、病状によって最適な治療は異なります。適切な治療時期を逃すと最悪足を切断しなければならなくある一方で、不必要な治療を行い、体に余計な蓋がかかることは避けなくてはいけません。

カテーテル治療とバイパス手術にはどんな違いがあるのでしょうか?カテーテル治療は局所麻酔で行い、入院期間は短く、体への負担は小さい治療です。一方、バイパス手術は入院が長く、体の負担が大きい一方で治療効果はより長く続きます。それぞれの治療に長所と他所があります。

■ 最後に

閉塞性動脈硬化症は、長年の生活習慣が原因となって起こります。自覚症状が出てきた時には病状が進行している可能性もあり、その時から治療を行っても根本的に解決する(動脈硬化を改善する)事は困難です。その為、閉塞性動脈硬化症にならないように禁煙や血圧・脂質・血糖コントロール・カルシウムやリンの管理を適切に行うことが必要です。
もし、すでに閉塞性動脈硬化症の診断を受けられた方は、今からでも血圧などのコントロールを適切に行いつつ、専門医を受診され、病状に応じた治療(カテーテルなど)を御相談されることをお勧めします。今回スペースの関係上割愛致しましたが、現在はカテーテルや手術の他に、LDLアフェレーシスや交感神経節ブロック、遺伝子治療など様々な新規治療も効果を上げているとの報告があります。我々も病状や皆様の全身状態に応じて専門医への紹介やそのタイミングでの適切な治療を行っていけるよう、努めてまいりますので、一緒に治療に向けて頑張りましょう。

仁成会理事長 依藤 壮史

明けましておめでとうございます
毎年のようにこの原稿を書きながら、新たな年を普段通りに迎えられて、本当に「有難い」と思います。このような思いに至るのは・・・「年齢のせいかな~」とも思いますが、それだけではありません。二〇一九年から始まった新型コロナ感染症による自粛生活や世界各地で起こる戦争・紛争・自然災害を日々目の当たりにしていると沸々と先のような思いが湧いてきます。日々色々あっても普通に暮らせていることに感謝している今日この頃です。
さて、昨年は、やっと・・・やっと、コロナ禍 から脱出したことを実感した年でした。クリニックでも感染者が増加した月もありましたが、何とか、院内感染を起こさずに乗り越えられました。これも皆様の継続したご協力の賜物と感謝いたしております。
さてさて、今年はどんな年になるでしょう。
コロナが落ち着いたように見えるけれど感染症は他にもあり、油断大敵です。何が流行ってもそれに打ち勝つように体調を整えておくこと、つまり、栄養(特にたんぱく質)と適度な運動・休養(睡眠)をとって、抵抗力・体力をつけることが第一です。
その他、身近なところでは、新紙幣発行ですか・・・。最近ではキャッシュレスが当たり前になってきたので、新しい顔が定着するまで時間がかかりそうです。せっかくなので新券を大事に保管しておこうか・・・なんて考えています。AI技術の台頭や二〇二四年問題も気になるところですが、いずれにしても、時代変化の後を追いながら、淡々とそこそこ平穏に過ごせますように。そしてまた来年も穏やかに迎えられますように。(鬼が笑いそうですが)
今年もよろしくお願いします

第二仁成クリニック院長 吾妻 眞幸

明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。
年の初めには、いつも穏やかで災いのない幸多い一年であってほしいと願います。
関東大震災から一〇一年、阪神淡路大震災から二十九年となる今年、地震対策についてもう一度考えてみたいと思います。災害はいつ、どこでも発生しうるもので避けることはできませんが、備えることによって被害を少なくすることは可能ですから。

災害時に皆さんにやっていただく事

  1. 災害伝言ダイヤル(171)でクリニックの情報を確認してください。
    171→→クリニックの電話番号(市外局番から)クリニックの伝言を再生するのみ。
    171→ 自分の伝言を録音してはいけません)】
    定期的に訓練をしていますから是非参加してください
  2. 可能な限りクリニックと連絡を取ってください。クリニックが透析不能でも可能な限り来院してください。
  3. 発災後、十二日は透析が出来ない可能性がありますので、発災時から塩分や水分・カリウムの摂取は控えて下さい。
  4. お薬手帳保険証(マイナカード)は保持してください。
  5. 目標体重アレルギー・禁忌薬剤は覚えておきましょう。
  6. 定期薬カリウム吸着剤は二~三日分備蓄しましょう。
  7. 避難所では透析を受けていることを申し出ましょう。
  8. 他施設で透析を行うときにも、当院の情報が必要となります。
    情報がなければ個々の条件にあった通常の透析が受けられないことがあります。
  9. 透析中に地震が発生した場合は、揺れが収まり回収が始まるまで回路をしっかり握って離さないでください。

透析医療はライフラインの障害に対して脆弱な医療ですが、患者皆様やクリニック、行政の密接な協力により治療に支障を来さない取り組みが可能です。
いずれにしましても、大きな災害が起きない事を切に願います。

仁成会 医師 依藤 良一

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